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晴雨計・10
「化学物質過敏症」
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旗野秀人(新潟の水辺を考える会会員)
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新潟市の端に無農薬野菜などを扱っている「虹屋」という小さな八百屋さんがある。数年前、縁あってその店づくりを手伝ったのだが、その2代目の店主、Tさんから電話があった。
なんでも客のKさんがマンションを購入し、住み始めたものの体の具合がとても悪くなったというのである。それが不思議と「虹屋」の店舗へ入ると呼吸が楽になって気分が良くなるというのだそうだ。きっと店の天井や壁、それに陳列の棚やテーブルにいたるまで天然の杉板を使ってあることや、健康に育った野菜や無添加の食品などに囲まれているからだと思った。
ここしばらくは店にも足を運んでいない私だが、きっと杉板の色もくすんでしまって今風のきらびやかな食品売り場などとはますます対照的なものになっているに違いない。
初夏とはいえまだ肌寒いほどのある日、そのマンションを訪ねて驚いた。すべての窓は開け放たれ、畳は立てかけられ、家具の扉や引き出しまでも開いたままだった。出迎えてくれた奥さんが開口一番「なんにもにおいのしない旗野さんでよかった」と言って喜ばれてしまった。たばこ(1年ほど前にやめた)やポマード(つけたことが無い)はては洗濯した服の洗剤のにおいまで気になり、具合が悪くなるのだそうだ。
しかし、他人にはなかなか理解されず、周りの人だけでなく医者にまで「わがまま」「我慢が足りない」などと言われた。そんな中で、北里大学の先生だけがようやく「化学物質過敏症」と診断したという。
話を伺いながら、水俣病患者がニセ患者といわれ続けてきた状況によく似ていることに気づき、豊かさの象徴のように新建材を与えられるがままに使ってきた鈍感な建築屋の一人として十分反省させられた。ところが現実的には建築基準法とやらが邪魔をして高層マンションの内装のすべてをKさんの体にあった杉板ばりの「虹屋」のようにはできないのだ。またひとつ近代化が生んだ「化学物質過敏症」という名の現代病を知った。
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