四半世紀ニューヨークで活躍する小林久子は2005年に続き、2回目の発表です。小林久子は昨今、ニューヨークはもとより、パリ、上海、フィレンツェと国際的に発表の場を拡大しています。
何といっても氏の作品の原点は、“意識と無意識”のはざまで揺れ動く美のざわめきで、特有の絵画的タブローの波紋が、平面の上を柔らかく撫でて流れます。
近年、画風は少しずつですがイメージの移行を始めています。その移行の行きつくはては、不思議な空間を遡った、無限な重なるひかりにも見え、無明長夜の淡々とした現実的静寂の「気」の気配の描写とも感じ取ることができます。
それは無意識下にある原風景の残像という批評家もいれば、こころなしか東洋への郷愁の感覚の表出と思う美術館関係者も少なくはないようです。
しかし、彼女の作品タイトルは、その「気」の描写の内に堅固とした核の(もしくは種子の)メタファーがあります。それをたぐり寄せることによって私たちは小林久子との一体感を哀しみ、歓びとして共有できるものと信じています。
今回の個展を機に、ひとつの節目として画集も刊行されました。成熟度の増した作品群は、日本女性にはめずらしくスケールの大きな、観る人々を包み込むような美の包容力があり、私たちの心の扉を開放してくれる贈り物であります。