展示記録

2007年10月5日〜14日

中矢澄子あかり展
「森の中で」

中矢澄子(なかや すみこ)
■1998年山里にアトリエを構えたことを契機に「あかり」の制作に入る。2001年以後新潟市をはじめ県内、東京などで発表。建築家の依頼により住空間にマッチし、生活の中で楽しめる「あかり」も制作する。フローラル・アーチストとしても活動中。





山姥のつくりだす「あかり」の世界

村尾欣一(建築家・新潟職業能力開発短大元教授)

 
 中矢さんは生き方も作風も奇想天外で紹介が難しい。お茶飲み話で故郷の倉吉市庁舎から丹下健三を論じ、転じてスペインのサグラダ・ファミリヤ聖堂との出会いを語る。彼女は98年に滝谷という新発田市の山奥に古民家を買い「月兎庵」と命名し住着いた。そこで季節ごと人々を招き、旬を肴に酒宴を催す。日常は「花咲かじいさん」という工房で何やら造っている。時々留守で、山かと思いきやヨーロッパやアメリカ、アジアを駆け巡る。この不思議な住人は自ら「山姥」や「庵主」と称し、時々街へ仕掛けに出かける。
 最近は「あかり」づくりに熱中している。山からアケビ・藤・山葡萄・等の蔓を仕事場にセッセと運び、大釜で煮沸する。干された蔓は皮を剥くと木肌は、捩れ・節・瘤等がまるで育歴を暴くように現れる。
 これを山姥は個性として慈しみ受容する。蔓どもは見抜かれた癖を互いに組み、添わされて、活き活きと「あかり」の骨格に生まれ変わる。
 山姥は光も自由に操る。その操作に和紙を選ぶ。和紙と光が千年の馴染みである事を承知して、手漉きを求めて全国を巡る。この紙に光源を反射させたり、溜めたり、透かせたり、時には飛ばす。
 こうして山姥が創り出した「あかり」はペンダント・ブラケット・フロアスタンドなどの品々になって街に送られ、現代の空間と時間を山姥の世界に惹き込んでいる。今回の個展では森ごと連れてきて、小道具に蓮や菱の実を携えて待ち構えている。

2007年10月4日 新潟日報 掲載