展示記録

2008年5月22日〜31日

好宮佐知子展「色の霧」

好宮佐知子(よしみや さちこ)
■1977年 東京生まれ
2006年 東京芸術大学大学院 博士後期課程美術専攻(壁画)修了

〈個展〉
2002年 SPICA MUSEUM (東京/青山)
2003年 ギャラリーGAN (東京/青山)
     ギャラリー椿 GT2 (東京/京橋)
2004年 ギャラリーGAN  (東京/青山) 
2006年 ギャラリー惺   (東京/吉祥寺) 
2007年 ウイリアム モリス (東京/青山)
2008年 工房 親 (東京/広尾)
その他グループ展多数。


色の霧

窓からそそがれる光が、部屋中を満たし、光の色をした霧の粒子が漂うような、空間をつくります。

雨粒が線となって降るように、光も線となり、降りそそぎます。それらすべてを取り巻く空間には、その空間を造り上げているものたちの粒子があります。光の粒子、陰の粒子、色の粒子、その場に漂う気体の粒子。粒子はとても細かく、霧のように空間を覆うのです。

世界の全ては、光によってうまれる、色の重なりでできています。その一層一層を、色の布を置くように塗り重ねることで画面を構築していきます。
                                         好宮佐知子



作品に記憶を呼び起こす力

弘中智子(板橋区立美術館学芸員)

 
 好宮佐知子の作品には、私たちがいつかどこかで見た場所の記憶を呼び起こす力がある。「色の霧―3(4月)」を見た私は、晴れた日に部屋の片隅で日だまりを見つけた時を思い出した。画面の大部分を占めるのは、カーテンである。その下方には7つの四角形がある。これは向かいにある窓から注ぎ込む光だろうか。カーテンのひだに沿って曲がり、ゆがんだ四角形は、ここに立体的な空間や風による空気の動きがあることを示すだろう。
 しばらくすると、カーテンの上から下に向かう赤、黄などでわずかに色づいた無数の細く長い線が現れる。これらは光の線だ。普段はあまり気に留めることのないような私たちの周りに降り注ぐ光は、この作品の中で色と形を得た。人が事物を見るために必要な光の存在を好宮は描くことで賛美しているようだ。
 東京芸術大学大学院で壁画を学んだ好宮は、ヨーロッパの古典的な絵画技法を応用し、パネルに下地を作った上に絵の具や色鉛筆で色を重ねた作品を発表してきた。下地による凹凸を持つ画面には、大地から発せられるような温かさがある。
 「自分が実際に見た光景、空気、雰囲気を描く」という作品は、描かれた対象や場所、時間を特定する要素がない。だからこそ、作品と向き合う私たちは、その中に広がる世界を自身の記憶をもとに自由に想像することができる。築百年以上の古民家を改造したギャラリーの中で、好宮の作品はどんな光を発するのか、楽しみである。

2008年5月21日 新潟日報 掲載