展示記録

2008年9月19日〜28日

佐藤裕一郎展

佐藤裕一郎(さとう ゆういちろう)
1979年 山形県生まれ。03年 東北芸術工科大学日本画コース卒業。卒業制作優秀賞受賞。05年 同大学院修了、同大学大学院修了制作選抜展(東和ギャラリー)に出品。01〜05年 創画展に出品。02年 第13回臥龍桜日本画大賞展で優秀賞。05年 第3回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞―明日の日本画を求めて―で優秀賞受賞。04年なびす画廊、05年ガレリア・グラフィカbisで個展。05年「I'm here」(せんだいメディアテーク)、06年「BLOX 2006」(同)等に出品。07年 画廊Full Moon、砂丘館で個展。METAUに出品(神奈川県民ホールギャラリー)、日本画滅亡論に出品(中京大学アートギャラリー C・スクエア)、個展(gallery-58、東京)


始まりと終わりが混在し循環する、根源的な生命の象。
奥深くに茫漠と広がる、混沌とした生命の景。
それらを「地中」を描くことで表現し、同時に自身が体感し、
堆積した記憶を基に、内的空間を体現しています。
近作は和紙に染料を使った作品を制作しています。
地中深くに内包した力が、蠢き、湧き出し、地上に解き放たれるように、画面内部に集積した意識の塊が、黒い像となって画面上に表出します。
自己の内的振動が鮮明に表れて来ることを願い制作しています。
                                  佐藤裕一郎
 


日本画の枠超え 表現を問う

藤島俊会

 
 佐藤の作品を最初に見たのは、2004年のなびす画廊の個展のときだった。重厚な画面が発する強烈なエネルギーのようなものを感じた印象がある。それが2007年8月の横浜で行われた11人の若い作家による「メタ展」では、圧倒的な迫力で見る者に襲いかかるような大画面だった。この部屋は照明を落として全体を暗くして、なおかつ暗い中にほのかに浮かび上がるような佐藤の画面が、細長い部屋の半分の壁を占めていた。作者自身「地中」を描くというように、地中の中の悠久の時間の流れが描かれているような画面であった。土の組成も生命と同じように、長い時間の経過の中で生成と発展の歴史を進行させている。作者の内面は、この地中の緩慢な動きに重ねあわされている。
 最近の若い人たちによる日本画は、実験的な試みも見せていろいろな可能性を秘めた分野となっている。大和絵や琳派のように色彩豊かに“描く”日本画ではなく、岩絵の具の画材としての可能性を探る試みや、佐藤のように和紙に土や砂、金属粉などの物質と絵の具を混ぜて染み込ませ、強固な絵肌作りを目指す者もいる。こうした佐藤の地味ながらも粘り強い作業は、作者の思考の基礎としての地固めの意味を持っているのではないだろうか。文字通り地に根ざすスタンスに立って、日本画の枠を超えて表現の根源を問う作品になっている。今後の成長が期待される新人の一人である。

2008年9月17日 新潟日報 掲載