展示記録

2008年10月17日〜26日

坂爪勝幸展

坂爪勝幸(さかづめ かつゆき)
■1947年村上市生まれ。九州、韓国で陶芸、築窯技術を習得。1979年に国際交流基金より客員教授として米国ニュージャージー州立アートセンターへ派遣。アメリカ各地で作品展開催。陶芸・築窯指導を行う。86年帰国、胎内市(旧中条町)に築窯。93〜95年東京、ニューヨークで個展。新潟では創庫美術館、越後妻有アートトリエンナーレ、万代島美術館、砂丘館等で発表。2004年新潟絵屋・画廊Full Moonで個展、以降毎年個展開催



土と火を糧に歩いた軌跡

坂爪勝幸(陶芸作家)

 
 「土と火を日々の糧にして随分と歩いたな」と思う時に、いつも心の端に引っ掛かるのは自然のありよう、空や風、山、水、石、木々…です。
 いにしえのころ、鉄(たたら)を造る者、焼き物師、鍛冶師…など火を操る人たちは、通称「鬼」と呼ばれた特別な存在でした。火を扱う折には、常に天空に祈り身を清めて火に向かいました。
 また別のある人たちは、濃紺の夜空にランダムにまき散らした星の天蓋から美しい物語を紡ぎだし、その上、天空に余す事無く明確に構造化された星座を創り出しました。
 誰が、このような感性と理性をもって可能としたのでしょうか。
 光と時間の移ろいに身を置き、かつて鬼たちが聞いていた炎の調べと土の言葉をきっちりと読み解いて土、鉄、水、気、を燃えさかる炎で溶くと…自然の断片が、私の手の中で少しずつ形を成して来ます。
 たとえ、「石ころ」とはいえ、その中に必ず私たちには日ごろ聞こえない、たくさんの石の言葉が、ひそかに仕込まれているのです。
 暮れなずむ青磁色の空にあかね色に染め上げられた雲、澄み切った風が渡り、ふっと「石」の前で足を止めた時、石のモノローグが聞こえて来て、行くべき方角と越えるべき山、渡るべき橋が、私には見つかるだろうか。
 いまだ霧の中にかすんで見えない向こう岸へ渡る橋を見つけるために、できれば真っさらな荒野を歩いてみたい。

2008年10月17日 新潟日報 掲載