展示記録

2009年4月17日〜26日

蓮池もも展

蓮池もも(はすいけもも)
■1983年新潟市生まれ。
2006年より作品発表。




閉ざされた場所の深さ実感

大倉宏(美術評論家)

 
 蓮池ももの絵を見ていると、日常を含む現実から大きく高く厚く壁で隔てられ、囲われた――閉じられた場所の深さについて、感じさせられ、考えさせられる。
 数年前、彼女の絵にはゆるやかに波打つ平原と木々、そこを歩いてゆく青い服の少女――歩き、出会い、踊り、離れていく少女がいた。色といえば少女の青と靴の赤、わずかにうすい黄色があるきりのモノクロームな世界が感じさせる色の深さと、強さに震えた。
 近作ではくすんだ黄色や茶色、紫などが見られるが、しかしさして色が増えたとも言えないだろう。それでもそれは、この閉じられた世界の確かな変動を感じさせる。閉じられた世界は、そう、変動する。そのことに、そのことにも、この世界が閉じられてあることの意味がある。天空から地底深く掘られ周囲を石垣で囲われた井戸の中のように、それは閉じられてあるが、見えない縁を外の世界と共有してもいるのだろう。変動はその符丁である。近作には手が翼になった子供たちや、動物の頭を被った(?)少年など異形のものたちが描かれるのが目にとまる。悲しみでも、痛みでも、つらさでも、喜びでもない、そのすべてであるようなものが「異」の姿で佇む。その聞こえない音の重みに、心が傾く。
 注目したいのはここに描かれるのはイメージではなく、絵というひとつの現実であるということ。色も、わずかな絵の具の揺れ、震え、重なりやにじみさえ、その揺れ動く現実の息づかいを伝えてくる。
 深く閉じられた、波打つ影の世界をひとつの現実として生きる、寡黙で、美しい、強い絵がここにある。。

2009年4月16日 新潟日報 掲載