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新・にいがた水紀行・13
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福島潟を歩く
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小船井秀一
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ひばりが、甲高いさえずりを残しながら、空高く昇っていく。 とんびがくるりと青空に輪を描くと、そのまま湖の柳の枝に止まった。 風はゆるやかに、水面を滑るように過ぎてゆく。もう寒さは全く感じない。日差しのぬくもりと相まって、さわやかだ。さざ波が立つ。草原が全体に揺らめく。 福島潟は、静かなたたずまいだ。初夏を迎え、ヨシ原はみずみずしい碧さをたたえ、水面のところどころを島のようにかたちづくりながら広がっている。水辺によく生えている木(ヤナギか?)がヨシ原のところどころに繁っているのがよいアクセントになっていて美しい。 港の桟橋のように突き出た「ヒシクイデッキ」の先まで歩いていく。水面の中まで突き出たそれの先端部に立つと、風と水の匂いを全身に感じることができる。湖面に作られているいくつかの小屋のようなものはいったいなんだろう。漁のためなのか、猟のためなのか、ぼくにはよくわからない。でも、それがあるために、かえってこの湖の風情を際立たせていることも確かだろうと思う。 湖は、広い。広くて、のどかだ。平日のせいか、ほかにここを訪れている人の姿も少ない。なんとなしに、心をほぐしてくれる風景が、ここにはあるようだ。 視線を湖の反対側の草原に移す。おそらく意図的に「放置」されているのだろうその草原には、ぼくにはその名もわからないような花があちこちに咲いていた。その美しさに、思わずカメラを向け、シャッターを押す。野鳥の鳴き声がひっきりなしに聞こえる。草原の中からも、ヨシ原の中からも。声を聞くだけでは、なんの鳥なのかわからないのがつらいところだ。もちろん、姿を見てもわからないんだが。 歩道は、きちんと舗装されている。幅は歩行者がゆとりをもってすれ違える程度。もちろん車は通れない。 ほとんど平坦な地形のため、「ビュー福島潟」から見下ろすようには湖面を見通すことはできないが、ずっと遠くに目を向けると、頂上付近にわずかに雪を残した菅名岳や五頭連峰、二王子岳の連なりが横たわっているのが見える。福島潟がたたえる水は、遠くそんな山々から供給されているのだと思うと、なんとはなしに感慨深い。 ぼくが歩いているのは、福島潟エリアの中でも、自然観察のために特に設定されている「自然学習園ゾーン」だ。だから水辺近くまで歩道も整備されているし、キャンプ場や芝生広場、無料休憩施設なども設置されている。あんまり極端なのは困るが、この程度なら許されるんではないか、という感じである。ようは、福島潟の自然をどのように後世に伝えていくか、ということが大事なわけで、そのために必要なことは、ある程度しなければならない、というのは理解できる。一般論で言えば、問題なのは、やり過ぎて結局自然が壊れてしまう、という例が実際あるわけで、ここもそうならないよう、うまいことやってほしいと思うわけで。歩道を進んでいくと、途中に農業用水路と思われる川が流れ込んでいる所に行き当たった。水の色は泥色に濁っている。ここで思ったのは、「どうせなら、水をある程度きれいにする実験をこんな川でやってみればいいのに」ということだ。かつて、故・荒井六男先生が職場の学校の排水を利用して、木炭やヨシかなんかでやったみたいなことを、こういう川で大がかりにやってみたら、面白いだろうなあ、てなことをなんとなく考えたのだ。流れ込む川水がきれいなら、福島潟の水だって当然きれいになっていくはずで、そんなことをみんなでいろいろ考えれば、もっともっとすばらしい湖になっていくのではないだろうか、と思うんだ。 ![]() やがて終点の「国設鳥獣保護管理センター」に着く。そこに上って湖を見ると、なかなかいい眺めだ。夕方近くになってきて、日差しがやや傾き始めて、陰影がくっきりしてきたのがまたいいのかもしれない。天気のいい日に、こんなふうに過ごすというのは、なかなか気分のいいもんである。 ゆっくりと戻ってくると、あの「ヒシクイデッキ」の先っぽに、高校生らしい女の子二人が腰掛けて、静かに語らっているのが見えた。その姿は、今どきのこやかましくてずうずうしい高校生のイメージはみじんもなくて、なんだかいい感じだった(ひょっとしたら二人の話の内容はそんな甘いもんではないのかもしれないが)。そんなのんびりした光景が、この福島潟には似合う、と思った。 ◇ ◇ 福島潟は、いい湖だと思う。ゆっくり歩くだけで、のどかな気分になれるところだ。で、どうせなら、ぼくは以前から主張しているのだか、湖の周囲に「水辺林」があればいいのにな、と思う。もともとこういう水辺には必ず生えていたヤナギやクルミ、その他の雑木林があれば、さらにより自然に近い風景になり、もっとすばらしい湖になるのではないだろうか。
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